韓国人には社交辞令が通用しない事をこのとき初めて分かった。
しかし、下宿のアジュマは彼のことを本当に歓迎しなかった。
イテウォンのウェーター・・・というだけで毛嫌いしていた。
2回目の彼の訪問の際、俺が下宿にいるにもかかわらずアジュマが、
「チグム ジョンホヌン オプタ。ウェーチュルチュンイダ(今、ジョンホはいない。外出中だ)。」
と、玄関先で言っていた。
俺が部屋にいる事を知っていたにもかかわらず・・・。俺は彼のことをそんなに嫌うアジュマにびっくりした。
そこでその日の夕方、俺は何でそんなに彼を嫌うかアジュマに聞いてみた。
そしたら、
「お前は日本からわざわざソウルにまで韓国語を勉強しにきたんじゃないか。あんな遊び人みたいな奴と付き合うな!私はお前の両親から大事な息子を預かっているという気持ちでやっているんだ。だから、もし韓国人と付き合うにしても、もう少しまともな人にしなさい!」
これがアジュマの意見であった。重い・・ヘビーだ。しかし親心みたいで反抗は出来なかった・・・。
しかし、その次の日も、パク スヒョンは俺の下宿を訪れた。
そして、アジュマはやはり居留守を・・・。俺はいないと言っている・・・。
俺はそのやり取りを階段の途中で立ち聞きしていた。
良心の呵責・・・。
『たしか奴の家はミアリ・・ここから結構遠いはずだ。』
俺は何かブルーな気持ちのまま、自分の部屋に戻った。
何気なく窓から外をみた。
『あれっ!?』
前の道の電柱のところにパク スヒョンが立っている。
あいつ、俺の帰りを待っているのか?・・・ってことは昨日も待っていた可能性が・・・。
飲んだ勢いとはいえ、友達になろうって言ったのは俺だし・・・。めちゃくちゃ心苦しく、心の中で、
『頼む、帰ってくれっ!』
と願った。
一時間後、もう一度窓から外を見る・・・。まだ待っている・・・。雨が降り出した・・・。
『頼む、帰れよ・・・。』
俺は願ったが、雨に濡れながら奴はキョロキョロと・・・、俺の帰りを待っている。忠犬ハチ公かっ・・・。
俺は家の中にいるのに・・・。
俺はアジュマに訴えた。
「可哀想だから家に入れてあげて欲しい。」
・・・何度も何度も。
やっとアジュマの承諾を得て、傘をさして外へ・・・。しかし、いない・・・。奴の姿がない・・・。
えっ?どこに行ったんだろう・・・。傘もなく、雨足はさらに激しくなる・・・。ここから地下鉄の駅まで相当あるし・・・。俺は急いで奴の後を追った。
まるでドラマか映画みたいだ。
心の中で奴に謝りながら・・・。しかし駅まで着いたが結局奴には会えなかった。
明日、電話しよう。いやもし明日奴が来たら家に入れよう。そう思い、俺はまた下宿へと引き返して行った。
韓国人は本当に友達を大切にする。親友のためならっていう気持ちが強い民族だ。
もちろん日本でもそうだが、韓国は更に強いって思った。奴はこの時点で本当に俺と親友に・・・、いや親友だと思っていたに違いない。
教訓:韓国人は本当にヘビーなくらい友達を大切にします。それが同性でも異性でも。
そして基本的にみんな優しいですよ。